●根付につきまして。


お金を入れるための巾着やたばこ入れ、水戸黄門でおなじみの印籠(いんろう)などを帯から提げて持ち歩きました。

それらの提げ物(さげもの)は落ちないように紐で留め具に結び付けて着用したのですが、その留め具を根付(ねつけ)といいます。

●根付の特徴。


留め具として提げ物とつなげるために紐を通すための穴がある。これを紐通し(ひもとおし)や紐穴(ひもあな)などといいます。

装身具として身につけたり手に持ったりするため、壊れやすい部分や着物がひっかかるような部分がないですし、そういった部分があるべきではないです。

腰のところに付けるため、比較的小さいです。大抵の場合、手の中に収まるくらいの大きさですが、それより少し小さいものや大きいものもあります。

昔、根付は、巾着や印籠、そして巾着や印籠の開閉のためにずらして使う緒締(おじめ)などとのアンサンブルの一部として隆盛を極めました。

今日、多くの根付が独立した美術品として展示・売買・収集されていますが、本来は提げ物に付いていたものであり、根付付きの提げ物一式を美術館や博物館、個人コレクション、ギャラリー、出版物などで目にすることもあるでしょう。

●根付の歴史。


いつ根付が使われはじめたのかは定かではありませんが、1700年前後の風俗画などに根付が描かれていることなどから、その頃までには根付は使用されていたと考えられます。

初めの頃は恐らく単なる木片など何でも留め具になるものを使用していたのでしょうが、根付は江戸時代(1600年代初めから1800年代半ば)を通じて大変優れた芸術性と遊び心溢れるアイデアを備えた工芸品に発展していきました。

非常に幅広い題材と素材の根付が、何千人もの職人によって製作されました。 
初期の作り手は彫金やもっと大きな彫刻などを専門としていて余技に根付を作っていましたが、後の作家の多くは根付製作に専念していました。

しかし幕末の頃から、流行や文化的状況の変化により、根付の人気に陰りが見え始めました。 
1900年代半ばにかけては、少数の作家がレベルの高い根付を作りつづけるのみとなってしまいました。

1800年代半ば以降、西洋人が根付に興味を持ちはじめました。大量の根付が西洋へ輸出されました。

以来、根付は西洋人によって活発に売買・収集・研究され、一方で大多数の日本人はほとんど関心を払わなくなってしまったのです。

この頃までに作られたものを古根付(こねつけ)、そして後に作られたものを現代根付(げんだいねつけ)と呼んでいます。

後者は「現代に作られた根付」を意味するだけではありません。西洋のコレクターや商人数名が日本人作家に対して単に古根付の模倣をするのではなく、独自のアイデアと現代的感覚で根付を創り出すよう励ましたのです。

近年、根付作家の数は日本でも他の国々でも増加していて、継続的に展覧会や販売会に作品を出している日本人作家と外国人作家は合わせて100名ほどいます。

今日、根付は、古根付・現代根付ともに、独特で魅力的な美術形態として世界的に高く評価されています。

現在のところ、根付はまだ西洋でのほうが良く知られているかもしれませんが、日本人の間でも関心が高まりつつあります(実際、携帯電話のストラップに根付を付けて持ち歩いている日本人もいます)。

根付は今でも進化しつづけています。根付を見るだけでもいいですし、手に持って感触を楽しんだり、収集したり、研究したり、彫ってみたりすることによって、あなた自身もこの楽しい根付の世界を探索することができるのです。

1 2